飼育ステージ
ペアリング
時期
常温で飼育した場合は、5月~8月にかけて行います。
温室で加温が可能な場合は、1年中ブリーディング可能です。
私の場合、シーズンのペアリング第一陣は2月~3月に“覚醒”させて3月にペアリングさせます。
ポイント
成熟したペアを使用すること
当たり前のようなのですが、実はとても大きなポイントかもしれません。私の場合は、必ず前年羽化した越冬済みのペアを使用します。♂、♀ともに成熟が進んでいないと良い結果が得られません。私の経験では前年の秋(10月羽化)の個体でも春には早すぎると思います。はやる気持ちはわかりますが、しっかりと大人になってからペアリングしてあげてください。一般的には春にペアリングするペアは前年の夏前に羽化していることが望ましいと言われています。
十分に餌を食べているか?
チェックポイントとしてペアリング前に餌をちゃんと食べているかの確認が必要です。温室で加温しているにも関わらず、潜ってばかりだと未だ冬眠モードのままかもしれません。温度を上げても変わらないようでしたら、一旦ペアリングを諦め、時間をおいて一緒にしてあげることが必要です。
相性の問題
こればかりは、クワガタに聞いて見なければわかりませんが、人間と同様にクワガタにも相性があります。今年も02年型神埼♂と03年型神崎♀(ともに同じ血統)で“不一致”があり、♀が背中に大穴を空けられてなくなりました。
また、前年まで仲良しに暮らしていたのにもかかわらず、ご主人のご機嫌を損ねて惨殺されるケースもあります。
左の写真は、02年型能勢産の夫婦でしたが、ご主人の欲求にご夫人が応えることができなかったようです。年数のたった熟年の夫婦には、このような事故があるそうです。私は、まだ経験ありませんがご婦人が食欲旺盛であり、ご主人を逆に襲って食べてしまうこともあるそうです。カマキリといい、昆虫の世界は厳しいですね。
ペアリング環境
私の場合は、コバエシャッター小でペアリングしています。仲良く食事ができるように木の餌皿に60グラムの高タンパクゼリーと16グラムの乳酸パワーゼリーをセットして、先ずは♂から先にいれて環境にならしてから♀を投入します。念のため、2週間ほど一緒にさせることもありますが、無用の事故(♂の♀殺し)を防ぐためにも短期間で切り上げたいところです。人によってはハンドペアリングで目の前で何度が交尾させて終了にする方もいます。まあ、好みの問題ですが2頭が仲良く餌皿の下で添い寝しているのを見るのもほのぼのしていて良いものです。
産卵
時期
ペアリング完了後、直ぐに♀は産卵スペースに移します。私の場合はコバエシャッター中に発酵マットに産卵木を埋めるようにしています。産卵期間は私の場合、平均して約6週間見ています。最後の2週間は♀を除いてしまいます。
ポイント
産卵木
どのような木でも産むときは産むようです。但し、促進させるという意味では最近ではカワラ材をよく使用しています。これは、通常の産卵木にカワラタケを植菌したものでなかなか成績もよいように思います。私の場合は、カワラ材1本にカワラタケの菌糸ブロックを1/2を発酵マットに埋めてセットしています。埋め方もいろいろバリエーションを工夫していますが、大きな違いがあるか検証しているところです。
温度管理
基本的に25℃程度の温度が必要でしょう。暖めることで、産卵された卵の孵化も早まります。
おまじない
多産してもらうために先輩たちはいろいろなアイデアを考え出しています。既に幼虫がいる場合にはその糞を水で溶いて産卵木に塗ると♀が安心して産むと言われています。また、使い古したマットを産卵木を菌糸ブロックを埋めるために使用するとよいと言われています。いずれも幼虫の成育環境を考えたときに♀が違和感なく、産卵できるようにする配慮かと思います。このような事をしなくても“産む時は産み”ますし、万全をつくしてもダメなときはダメです。“子は授かり物”といいますが、クワガタの場合もまさにその通りです。
割出
産卵木から割出は、羽化した成虫を取り出す時と同じ位、ワクワクするものです。
時期
♀を取り除いた後、2週間(産卵開始後、6週間程度)を目安に割出をします。ケースの底を幼虫が這えずり回ってからでは遅すぎます。
ポイント
割出前には十分に準備をしてから臨みましょう。
例えば、詰替える菌糸ビンや一次小分けにするプリンカップ、ビンに張る管理シール(私はなかクワさんのクワガタ管理ソフトを愛用しています)などです。温室で産卵させていて、いきなり温度差のある室内に移動して割出をするとあっという間に死んでしまうことがあります。それだけ、初齢の幼虫はデリケートで弱弱しいものなのです。昨年も本土ヒラタの割出で不用意に放置(実際は昼飯を食べていたのですが)したために何頭も黒くなって死んでしまいました。用具なども段取りよく、作業できるようにセットしてから、いざ割出です。
割出には細心の注意が必要です。私は、マイナスドライバーを使用して割りやすいところから徐々に割っていきます。
どんなに注意しても必ず1頭、2頭は殺ってしまします。とても悲しくなりますが、めげずに手際よくすべて割り出してしまうことが肝要です。産卵木の次は、菌糸ブロックやマットに幼虫がいないか注意深く探してみます。
割出後の幼虫は、600ccもしくは800cc程度のビンに入れます。
初齢では600ccでも十分との見方(昨年までは私もそうでした)もありますが、初期での生育環境からその後の成長が左右されるとの先輩達の助言もあり、今年からは800ccビンか850ccのポリ容器に投入しています。実は、生育の問題もあるのですが、1本目のビンの後期に差し掛かると幼虫が狭そうにしているのが可哀相というのが本音です。
どんなに注意深く探しても必ず1頭、2頭は漏れがありますので割り出した材やマットは、他の幼虫のものとは一緒にせず、一週間後ぐらいにもう一度チェックしてみましょう。かならず、1頭は発見できますよ。
幼虫飼育
時期
1本目のビン交換は、大体2ヶ月を目処に行っています。2本目以降の交換は3ヶ月を目処に交換しています。
ポイント
交換のタイミング
これも先輩諸氏のアドバイスですが、早め早めの交換が秘訣です。未だ、食べるところが沢山さるのにもったいない気持ちはわかりますが、幼虫のことを考えると“早目”がよいようです。
居食い菌
糸ビンの中央にドンと居座って自分の排泄したフンを繰り返し食べているような幼虫には大型のものが多いようです。下記は、G-POT内の三潴産。
準備する菌糸ビンは飼育環境に良く慣らされたものを使用します。
特に自分で詰めたものではなく、ポリなどに詰められたビンを使用する場合には配送後、十分な“ならし”が必要です。ガスが発生したり、高温になっている場合もありますので幼虫投入後に暴れたりして無用な体重ロスを招かないよう注意が必要です。
交換には、細心の注意が必要です。
割出同様に十分に準備をしてから臨みましょう。チェックリストを作ってからはじめても良いと思います。幼虫を移し変えている時間がミニマムになるにはどうしたらよいか?常にそのことを念頭に作業することがポイントです。
交換には機材の消毒は欠かせません。
私は決して幼虫を素手で触りませんが(頭幅を計るには触らざるを得ませんが...)、愛用しているのは薬剤師用の大型スプーンと石焼ビビンバ用のスプーン、そして包丁研ぎです。これらをライオンのキレイキレイで消毒してから交換します。
交換数に併せて幼虫が潜りやすいように穴を開けておきます。
3齢ともなるとかなりの大きさ(15~20g)ですので十分な大きさの穴を開けておくことが必要です。
交換時には前の菌糸ビンの食痕や糞を幼虫と一緒に入れてあげることが必要です。
これは新しい環境に幼虫がスムーズに移行できるようにするための必須作業です。
体重測定
ビンの交換のタイミングにキッチン秤で体重を計測しておきます。前回からの増減を見ることで幼虫の現在の状態を把握することができます。体重測定は、ビン交換時の楽しみの1つでもあります。
交換後の措置
幼虫が新しい菌床に慣れるまでは暫くフタをしないで様子を見ます。
幼虫期間中の注意
できるだけ、静かで薄暗い環境でそっとしておいてあげましょう。但し、環境の変化(菌糸の急激な劣化や幼虫の暴れ)がないか定期的な管理は重要です。私はビンの周りを模造紙で包んでいます。
このようにすることで幼虫への光の刺激も軽減されますし、何よりもガラスの側に幼虫が来てくれるので観察がしやすくなります。これは、子供の頃に蟻の飼育で巣を掘らせた時と同じ理屈です。
蛹化
時期
春先に産卵させてものであれば早ければ8月には♀が先陣を切って蛹化が始まります。この時期は振動や刺激にデリケートなのでできるだけそっとしておいてあげましょう。
ポイント
幼虫は楕円形の蛹の部屋を作り始めます。
このようになるとできるだけそっとしておきましょう。蛹室を作り終えた幼虫は、体がシワシワになり中央で棒状になります。数日間そのままですが、やがて乳白色の蛹に変化していきます。なんとも神秘な瞬間です。
羽化
時期
蛹化後、サイズによって異なりますが1ヶ月程度で羽化してきます。
羽化の様子
人工蛹室(メガエッグ)での対馬ヒラタ♂
対馬ヒラタ羽化の様子
蛹室内での羽化
蛹室内での能勢産オオクワガタ♀
蛹室内での能勢産オオクワガタ♂
蛹室内での韮崎産オオクワガタ♂
羽化後、数日経つとこのように黒くなります。
ポイント
羽化サポート
菌糸ビンでよくあるのが蛹室内のきのこの発生です。ほっておくと蛹をキズつけかねませんので救出が必要です。移動先は、人工蛹室が、同じクラスの幼虫が羽化した蛹室に移すことです。私の場合は、やはり安心して見ていられるのは既に成虫が羽化した蛹室です。人工蛹室の場合は失敗するケースが若干高いような気がします。
成虫
時期
羽化後、数ヶ月は餌は不要です。オオクワに比べてヒラタは後食(羽化後初めて餌を食べる)する時期はかなり早いです。
ポイント
スペースの許す限り、個別管理をしてあげましょう。私は、コバエシャッターミニや小ケースに管理シール(私はなかクワさんのクワガタ管理ソフトを愛用しています)を張って管理しています。