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第二話 夏休みの家族旅行

見あげるとくぬぎの木の上の方をものすごい勢いで黒く大きな虫がのぼって行くではありませんか。

それは、はなちゃんが小学校に入学した年の夏休みのことでした。

夏休みの家族旅行で栃木県の那須高原に出かけました。

初日は、ホテルのプールで遊びました。
山の方でカミナリがなる中で、びくびくしながら遊びました。

そして、いよいよ二日目は楽しみにしていた高原の遊園地です。

午前中は、アスレチックと観覧車で遊びました。
はなちゃんは、まだジェトコースターには乗れません。おにいちゃんは、ゴーカートが気に入ったようです。

そして、みんなでレストランでお昼ご飯を食べていた時のことです。
大きなポスターがみんなの目に止まりました。

「カブトムシつかみどり大会 遊園地の林で3時から開催」

はなちゃんは、同じクラスの太郎くんが自慢げに持って来ていたカブトムシを思い出しました。
大きな角を持ったおとこの子のカブトムシは、怖かったのですが、角のないおんなの子はまあるい目をしてとてもかわいらしいと感じたことを思い出しました。

「パパ、カブトムシをとったことある?」

はなちゃんは、聞きました。

「子供の頃にたくさとったよ。パパは虫採り名人と言われてたんだよ」

「ほんと⁈ すっご~い」

おにいちゃんとはなちゃんは驚きました。

おにいちゃんは、すぐにでも行きたくてうずうずしているようです!

「よし、3時になったらつかみどり大会に行こう!」

パパが叫びました。

虫が苦手のママは、少しユウツそうでしたが、パパが

「大丈夫!」

と言って説得しました。

おにいちゃんとはなちゃんはだんだんワクワクしてきました!

3時近くになり、会場にいくとすでに何組かの家族が集まっていました。
会場は遊園地の外れの雑木林の一部をロープでしきった場所です。

しばらくすると係のおじさんとお兄さんが、やってきました。
お兄さんは、両手にバケツをもってロープの中に入り、バケツのなかのものをまきはじめました。
はなちゃんにも間もなく、それが何かわかりました。

カブトムシです。

ほどなくまきおわるとスルスルっとロープが外されました。
いよいよつかみどり大会の始まりです。
パパとおにいちゃんはいちもくさんにくぬぎの木に向かって走りだしました!
はなちゃんとママは恐る恐る入って行きました。
というのも雑木林に入るのは初めてだったのです。
やがて、パパがおにいちゃんを肩車して言いました。

「おにいちゃん、木の枝ではたきおとすんだ!」

見あげるとくぬぎの木の上の方をものすごい勢いで黒く大きな虫がのぼって行くではありませんか。

おにいちゃんはふらふらしながらも手に持った木の枝でかぶとむしを無事はたき落としました。
はなちゃんとママが急いでかけて行くと大きなかぶとむしがひっくり返っていました。
おにいちゃんは、あわてて枝でひっくり返すと虫かごにいれました。

しかし、はなちゃんが楽しみにしていたおんなの子が見あたりません。しばらくするとパパが、

「はなちゃん、あの木のねっこを掘ってごらん!」

といいました。パパの指さす木のねっこを掘ってみると...出てきましたかわいいおんなのこのカブトムシです。

「ヤッター」

おにいちゃんのつかまえたおとこの子てあわせてけっこんできそうです。

結局、この男の子と女の子のかぶちゃんを持ち帰ることにしました。

受け付けでは、コクワガタというクワガタも売っていました。
パパは、目をかがやかせながらなつかしそうに水槽をのぞき込んでいます。

「パパは子供のころによくとったんだよ」

と話しました。昔の子供は虫とりがあそびたったそうです。

けっきょくおとこの子とおんなの子のコクワガタを一匹ずつ買って帰りました。

はなちゃんは、こんなにうれしそうなパパの顔は初めて見ました。

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